105歳の電線メーカーが生み出すイノベーション
「顧客の声を聞いて挑戦を」
「うちはできません」で終わらせない。その言葉に、創業105年を迎える東京都品川区の電線メーカー「インターワイヤード」の企業姿勢が集約されています。電線・ケーブル製造で培った技術を基盤に、顧客の課題解決に挑戦し続けています。
情報とエネルギーをつなぐ企業としての誇り
「私たちの製品は、ふだんは目立たない存在かもしれません。しかし、医療現場や放送局、さらには街中のコンビニまで、社会のさまざまな場面で重要な役割を果たしています」と語るのは、同社の斉藤義弘社長です。
創業は大正時代の1919年。まだ電化製品が一般的ではなかったころ、斉藤社長の祖父が電線の製造を始めました。
「ちょうどパナソニック創業者の松下幸之助さんが二股ソケットを開発して、売り出したころです。祖父もこれから電気が社会に広がっていくことを見据えていて、ベンチャー精神を発揮したのだと思います」(斉藤社長)
以来、電線の製造にとどまらず、放送機器やコンピュータに接続するケーブルや店舗や住宅で使うヒーター線へと事業を広げました。さらには、エネルギーだけでなく情報の分野にも進出し、マーケティングリサーチを手がけるようになりました。
「情報エネルギーを通わせて、豊かさと快適さをクリエイトする」
そんなパーパス(存在意義)のもと、約100人の社員が新しい社会のニーズに真剣に向き合っています。
消防車のケーブルからコンビニのヒーターまで多様な製品
インターワイヤードの強みは、カスタマイズ製品の開発力にあります。顧客のニーズをていねいに汲み取って、新たな製品を提案・開発する姿勢が信頼の獲得につながっています。
取引先は、計測器メーカーや放送関連企業、自動車関連メーカーなど多岐にわたります。珍しい製品としては、オーストラリアの鉱山で使われるロープ型のメジャーや、消防車に取り付ける丈夫な電気ケーブルなどがあります。
また、寒冷地の施設向けには、電線やケーブルの製造技術を生かして、凍結防止ヒーターや融雪用ロードヒーターを提供しています。
「コンビニの焼き鳥などのショーケースを温めるヒーターにも、うちの製品が使われています。お客さんからは見えないですが、棚の裏側にヒーター線が貼り付けてあるんですよね」
斉藤社長はそう説明しながら、「社会の変化とともに生まれる新しいニーズをキャッチして、それを製品開発につなげられるかどうか」と、会社が100年以上続いてきた秘訣を口にしました。
顧客の課題から生まれるイノベーション
インターワイヤードの拠点は、営業部門を中心とした東京本社と、群馬県と岩手県の工場の計3カ所です。そのうち営業部門では、30代から60代まで約10人のスタッフが働いています。
「幅広い年齢層の社員がいますが、経験豊かなシニア人材も歓迎しています。電線業界だけでなく、計測器や放送機器など我々の取引先の業界の経験者も活躍しています。むしろ、他の業界の知識が新しい価値を生み出すきっかけになるんですよね」
斉藤社長はそんな人材に、これまでの電線メーカーの常識にとらわれないイノベーションを生み出すことを期待しています。
「重要なのは、顧客がどんな課題を抱えているのかを適切に把握して、既存の概念にとらわれない発想で、それに対する解決策を提案できる力です。新しいことへのチャレンジを面白がれる人と一緒に仕事をしたいですね」
働きやすさと挑戦を両立する職場環境
同社は、社員が心身ともに元気に働ける職場を目指し、健康づくりにも積極的に取り組んでいます。その成果は、東日本電線工業健康保険組合から与えられた「健康優良企業」のゴールド認定にあらわれています。
ISO9001やISO14001、プライバシーマークにも早くから対応し、時代の要請に応える体制づくりも着実に進めています。有給休暇の取得率もほぼ100パーセント。「働きやすい会社だと、自信をもって言えます」と斉藤社長は胸を張ります。
そんな恵まれた職場環境を生かして、新しい挑戦をしてほしい。斉藤社長はそう期待しています。
「電線業界は成熟産業と言われていて、特に国内では、かつてのような右肩上がりの成長は期待できないかもしれません。しかし、電線の技術を生かした新しい製品は今も、生まれ続けています。我が社が創業した100年前と同じようなベンチャー精神を発揮する余地は十分にあるんです」
共に学び、共に育つーーそんな理念を掲げるインターワイヤードでは、未来につながる「何か」を見つけるために、一緒に歩んでくれる仲間を探しています。